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北里大学医学部教授 宮下俊之先生

医学部進路の決め方

Q1.先生が医師を目指されたきっかけについて、教えていただければと思います。

私の出身は長野県飯田市で、そのまま地元の長野県立飯田高等学校に進学しました。山に囲まれた自然豊かな地域で、予備校や塾はありませんでしたから、高校の授業と参考書を使っての自学自習を中心に学習していました。分からないところは、優秀な友人とお互いに教えあうなどして勉強していました。高校の時は医師を目指していた訳ではありませんでした。当時は、生き物全般に興味があり、特に昆虫の研究がしたいと考えていましたので、研究者を目指し東京大学理科二類に進学しました。
東大に入学して一般教養などを勉強するうち、医学への興味がわき、医学部へと進学しました。医学部に進学してからは勉強が大変で苦労しましたが、山岳部に所属し、気分転換に山へ登りながらチームワークの大切さを実感するなど、とても充実した日々でした。

北里大学医学部医学部

Q2.東京大学医学部をご卒業されてから現在に至るまでのことについて伺います。

東京大学医学部を卒業後、大学病院で臨床医として勤務していました。私が担当した患者さんの一人が免疫不全という病を患った方で、リンパ腺が腫れて高熱が出てしまう病気に苦しんでいました。原因を究明しようと様々な科の先生の意見を聞くうちに、遺伝子を解析しないと原因がわからないことが判明しました。遺伝子解析の研究をしていた先生のもとへ症例を持っていくと、研究に携わってみないかと誘われて、研究の道へ進むことになりました。研究を続ける中、元々若い人に教えることが好きだったこともあり、教育の道に進むことを決め、現在は北里大学医学部に勤務しています。

北里大学医学部医学部

Q3.北里大学医学部の特徴についてお聞かせください。

まず、首都圏では有数の敷地を持った大学だということが挙げられると思います。首都圏の医療系大学の中ではトップクラスの広さを誇るキャンパスの中には学生生活を快適なものにする様々な施設やアメニティが充実しています。さらに、来年には新しい臨床教育研究棟が完成します。医学部だけでなく、薬学部・看護学部・医療衛生学部の学生も利用するこの施設は、自習室や図書館、学食などが充実しており、スキルス・ラボという臨床や技術訓練の実習施設が作られることになっています。大学病院も最新設備を備えており、最新施設を使って教育を行っています。
また、生命科学の総合大学であることも長所の一つです。医学部・薬学部・看護学部・医療衛生学部の医療系4学部・獣医学部・海洋生命科学部・理学部の7学部がありますので、医学部以外の学部の学生と交流することができますし、チーム医療についても学習できる環境が整っています。さらに、獣医学部の学生との農医連携も盛んで、食と医療の問題や、動物介在療法などについて医学部と獣医学部の学生が共同で学んでいるほか、動物と人間の治療法について横断的に検証する最先端の研究にも対応しています。
そして、私立大学の医学部の中でも、特に面倒見が良い大学だと思っています。各学年数人ずつと教授一人をグループにした「懇和会」を作り、年に一、二回の食事会などを通して学年をまたいだ交流を図り、勉強・進路の相談も行っています。さらに、成績が思わしくない学生を対象に研究室単位で指導を行う「特定懇和会」や「けやき会」と呼ばれる医学部の父母会の際に行う面談を通じて学習や精神面のサポートを行っています。
このような活動の結果、卒業生の多くは愛校心を持って卒業し、お子さんを北里大学に通わせたいと考えている方も多くいらっしゃいます。

北里大学医学部医学部長 宮下俊之先生

Q4.北里大学医学部の教育の特徴についても詳しくお聞かせください。

まず、北里大学医学部は、器官系別総合教育の講義を全国の医学部に先駆けて始めた大学だということが大きな特徴です。従来のように内科・外科などの科ごとに授業を行うのではなく、呼吸器系や循環器系などの器官系別に講義を行うことで、その系に関連する様々な教員が講義を行います。これによって学生は系ごとに総合的な知識を得ることができます。
また、入学後すぐに大学病院で体験当直という実習があるのも特徴です。救急の患者さんを見て何かを感じ、衝撃を受けることで、医学部生としての自覚が芽生えることを期待しています。一年生の夏には、学祖である北里柴三郎先生の出身地である熊本県小国町での農村実習や、獣医学部附属施設である北海道八雲牧場での実習があります。どちらも医学との直接の関係はありませんが、学生たちが農業や畜産業に触れ、生き物に接することは良い経験になると考え、実施しています。二年生になると、地域の病院や介護施設、福祉施設などへ実習に行きます。この活動を通して、お年寄りや体の不自由な人と接する機会を多く設けています。
私学として、基本的には地域医療に携わる臨床医の育成が使命であると考えていますが、基礎医学研究にも興味を持ってほしいと考え、一年生から三年生向けに医学研究入門という授業を行っています。一年生では英語で書かれた医学論文を読み、二年生で献体や遺伝子操作を用いて実習を行う際の倫理について学習した後、三年生では実際の研究室に一か月配属され、研究の初歩を学びます。これをきっかけに研究に興味を持ち、卒業時には簡単な論文を書く学生もいます。
進級は二年生から三年生に上がる時が大変ですが、成績が思わしくない学生には個別の支援も行っています。なんとか全員が順調に進級・卒業してほしいと考え、努力しています。

北里大学医学部医学部

Q5.医学部生への心構えと受験生へのメッセージをお願いいたします。

医学部は入学してからも覚えることが多く、大変な学部です。理屈よりも暗記を優先させなければならない時もあるかと思います。覚えることをいとわず、完璧主義にもならずに、多くのことを覚えてほしいと思います。また、もっと社会のことに関心を持ち、教養もなるべく身に付けてください。患者さんと将来コミュニケーションをとるうえで、懐の深い医師になってほしいと思います。
医学部を目指している受験生には、弱者の立場に立って物事を考えられる人でいて欲しいと願っています。核家族化が進み、格差も激しい現代では、病気で困っているお年寄りや、病院に行きたくても仕事が忙しい、お金がないなどの理由で行けない人を知る機会が少なくなっています。そのような弱い立場に置かれた人のことを常に考えることのできる人に医師になってほしいと私は思っています。また、患者さんと実際に接するうえで、コミュニケーション能力は重要です。うまく他人とコミュニケーションをとれることが医師として働くうえで重要であると思います。

関連リンク 北里大学ホームページ

みやしたとしゆき
宮下俊之先生 略歴

北里大学医学部長
分子遺伝学 教授

略歴
1980年 3月 東京大学医学部医学科卒業
1980年 6月 東京大学医学部附属病院小児科研修医
1984年10月 東京大学医学部附属病院小児科助手
1988年 4月 国立小児病院小児医療研究センター リサーチレジデント
1991年 2月 米国ペンシルバニア大学病理実験医学教室post-doctoral fellow
1992年 7月 米国ラ・ホヤ癌研究所post-doctoral associate
1995年 4月 国立小児病院小児医療研究センター 先天異常研究部遺伝染色体研究室長
2002年 3月 国立成育医療センター研究所 成育遺伝研究部疾患遺伝子構造研究室長
2007年11月 北里大学医学部分子遺伝学教授
2016年 7月 北里大学医学部長