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名古屋大学 理事 高橋雅英先生

医学部進路の決め方

Q1.名古屋大学医学部の特徴についてお聞かせ下さい。

名古屋大学医学部は140年以上の歴史を誇る素晴らしい伝統のある医学部です。特徴としては、自由闊達な雰囲気を作ることを一つの目標にしています。近年は私立大学の医学部を中心に、カリキュラムが非常にタイトなものになってきています。本学医学部では、学生が伸び伸びと学習できるようなカリキュラムで教育をしています。1,2年生の間は教養が中心で、あまり忙しくありません。これは、クラブ活動などの課外活動を通して、豊かな人間性を育んでほしいという願いからです。学生には、積極的な気持ちを持って様々なことに挑戦してほしいと思っています。
海外交流が盛んなことも名古屋大学医学部の特徴です。学部レベルでも海外の多くの大学と提携を結んでいます。名古屋大学が日本全国の他の大学に先駆けて行った取り組みも多く、特に海外に留学して臨床実習を行うプログラムは高い評価を受けています。海外での臨床実習を通して、日本とは異なる医学教育を学び、海外独自の医療を体験することは学生の将来を考えると、とても良い経験になると思います。また、海外で医学を学ぶ学生や、一流の臨床医、研究者と交流することで、帰国後の勉強へのモチベーションも大幅に向上すると思います。
研究に関しては、大学院生を対象に、日本初の海外大学とのジョイントディグリープログラムを実施しています。この制度は、大学院4年間の内、最低でも一年間、海外の提携大学で研究を行うことで、名古屋大学と海外の大学院の両方の学位を取得できる制度です。研究医を目指す大学院生には、この制度を利用して早い時期から海外での研究を経験してもらうこと、研究への意識を高めてもらうことを目標にしています。名古屋大学は旧帝国大学、現在は基幹大学として、研究者の育成を第一の使命であると考えています。臨床医の育成にも力を入れていますが、研究医の育成を重視しているところが、名古屋大学医学部の特徴です。

名古屋大学医学部

Q2.研究医の育成について特に力を入れている取り組みなど、お聞かせ下さい。

名古屋大学医学部では研究医の育成に関して、特に奨学金制度の充実に力を入れています。大学院に進む際に研究に専念することを表明した学生には、主に二つの奨学金制度が用意されています。一つは民間の武田財団が提供してくださっているもので、基礎医学の研究者を目指す大学院生のために用意された奨学金制度です。もう一つは基礎医学、臨床医学どちらを目指す学生も利用することが出来る奨学金制度で、こちらは大学側が提供しています。この制度によって学生の研究へのモチベーションを大きく向上させることが出来ました。また、ジョイントディグリープログラムを利用して留学した大学でも、手厚い奨学金制度が用意されています。このように、研究医育成のための制度・環境は、日本で一番といって良いほど整っていると思います。研究医を目指している人は是非、名古屋大学を目指してください。
アメリカなどの欧米諸国は奨学金などの研究者育成のための制度、設備が日本よりも遥かに優れており、寄付などの慣習もあって研究環境が非常に整っていると感じます。日本はまだまだこれからという印象ですが、研究設備などはアメリカと比べても遜色ないレベルまで向上してきました。これからさらに研究者の育成に取り組んでいきたいと思います。

名古屋大学医学部

Q3.先生ご自身のことについてお聞かせ下さい。

私は愛知県の出身で、高校は東海高校でした。はじめは理工系に進みたいと思っており、東京大学理科一類を志望していましたが、高校生の頃、腎炎を患い、暫くの間通院生活を送ったことをきっかけに医療に興味を持ちました。高校生の頃はまだ学生運動が続いていた時代で、時に授業が休講になったり、高校でデモが行われたりしていました。受験勉強に関しては病気のこともあって、塾に行くこともなく、家での自学自習が中心でした。部活をしていなかったこともあり、コンスタントに勉強できたことが合格の要因だったと思います。
将来に対する明確な目標などは何もありませんでしたが、高校時代、理工系に興味があったことから、研究には興味がありました。大学卒業前になって、自分が医学部を目指すきっかけになった腎臓病を治療する腎臓内科の臨床医を志すか、研究医の道に進むか迷った結果、臨床分野に近い研究のできる病理に進むことに決めました。病理医として研究を行っていく上での一番の利点は、形態学の理解が深いことだと思います。他の医師があまり熱心に勉強しない形態学の知識を使って、他の研究者とは違う視点、切り口から研究テーマを見つけることが出来るのです。これは研究を行っていくうえで私の大きな長所でした。病理医の最も大きな仕事はガン研究で、私が研究を始めた頃はまだ何も解明されていませんでした。私は研究生活を発ガンの分子メカニズムの解明にあてることができて、とても良かったと感じています。何もわからないところから新しい分野を切り開いていくことこそ、研究の醍醐味といえるからです。その意味でも、名古屋大学の大学院からハーバード大学の研究所へと留学したことは、人生の転機だったと思います。
大学院時代にサンフランシスコの医学研究所を訪れた際に、紹介状を書いていただいた縁で道が開け、その後ハーバードに留学することが出来ました。留学先の研究グループは世界初の発ガン遺伝子を発見したチームで、何としても留学したいと思い、断られても何度もアプライしてとてつもなく安い給料で留学しました。留学中は1週間50ドルで生活しなければならず、三食自炊の大変な生活でしたが、研究はとても有意義で充実した毎日でした。現在は日本の設備も向上し、アメリカよりも良くなってきていますが、当時はアメリカに行かなければ最先端の研究は何もできない時代でしたので、必死でアメリカに渡りました。向こうでは週7日間休まずに研究していました。研究設備などの環境は整っていましたが、大学側が給料を出してくれるわけではなく自分で稼がなければなりませんので、とてもアメリカに残って研究を続けていく気にはなれませんでした。しかし、アメリカで最先端の医療を学べたことは、私の研究生活の中でとても良い経験だったと思います。

Q4.名古屋大学医学部を目指す受験生と保護者の方にメッセージをお願い致します。

名古屋大学医学部は研究医の育成を大きな使命と考えています。最近は、日本の研究者がノーベル医学生理学賞を受賞したことをきっかけに、医学研究に関する記事が、新聞や雑誌に多く掲載されるようになり、関心が非常に高まってきました。研究に興味がありましたら、インターネットなどを利用してそのような記事の情報を収集し、最新の医学研究がどのようなものかを調べてみてほしいと思います。
また、医学部は医師を養成する学部でもありますので、協調性は必要な能力の一つだと思います。研究であれば、一人でもできないことはありませんが、医師免許を持った医師になる以上、たとえ研究医であっても、他人の痛みがわかるということはとても重要です。これは経験によって身につけていくものでもありますが、ぜひこのようなことを強く意識できる学生に入学してきてほしいと思っています。

関連リンク 名古屋大学ホームページ

たかはしまさひで
高橋雅英先生 略歴

略歴
昭和54年 3月 名古屋大学医学部卒業
昭和58年 3月 名古屋大学大学院医学研究科修了
昭和58年 4月 米国ハーバード大学医学部、Dana-Farber癌研究所 Research Fellow
昭和60年11月 愛知県がんセンター研究所研究員
平成 2年 4月 名古屋大学医学部病理学第2講座助手
平成 7年 6月 同上助教授
平成 8年 7月 同上教授
平成12年 4月 名古屋大学大学院医学系研究科教授
平成15年 4月 名古屋大学大学院医学系研究科附属神経疾患・腫瘍分子医学研究センター・センター長(平成24年3月迄)
平成20年 3月 名古屋大学大学院医学系研究科附属医学教育研究支援センター・センター長(平成24年2月迄)
平成24年 4月 名古屋大学院医学系研究科長・医学部長

学会関係
平成 3年 4月 日本病理学会評議員
平成 6年 1月 日本癌学会評議員
平成28年 5月 日本病理学会常任理事

受賞
中日文化賞、読売東海医学賞、日本病理学賞、日本病理学会学術研究賞、日本癌学会奨励賞