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東京医科歯科大学医学部長 北川昌伸先生

医学部進路の決め方

Q1.東京医科歯科大学医学部の特徴についてお聞かせください。

東京医科歯科大学医学部の大きな特徴は研究に非常に重点を置いているということです。多くの大学の医学部では臨床医の育成を一番に考えた教育プログラムを作成し、教育を実施していると思いますが、東京医科歯科大学では研究志向の臨床医や、グローバルに活躍できる医師、世界最先端の研究に携わる研究医の育成にも重点を置いた教育を行なっています。
東京医科歯科大学医学部の教員には本学出身者が多いことも特徴です。学生が自分の後輩にあたることもあって、非常に教育熱心ですし、面倒見も良いと思います。学生の人数も少ないこともありますし、やがては自分の後継者となる人材を育成したいという思いは多くの教員に共通したものであると思います。
入試制度に関しては、平成30年度に向けた改革を行なっています。全国の医学部で定員が増えていますが、本学では定員を増やした後、勉強についていけない学生が以前よりも増えたように感じており、問題意識を持っています。ほとんどの学生は問題なく大学生活を送っていますが、学力には問題がなくても、医師になることへのモチベーションが足りずに留年してしまったり、ドロップアウトしてしまったりする学生がいることは残念です。優秀な学生を多く確保するために、面接方式などに変更を加えたいと考えています。大学に入学した後も、学生を集めてのオリエンテーションや、個々の学生への面談など、様々な対策を取っています。本学は担任制をとっており、学生へのサポートは主に担任教員が行なっています。これからも丁寧な対応を行なっていきたいと考えています。
近年、AIが急速に発達しており、医療の現場への応用も始まっており、東京医科歯科大学としても、いくつか研究を行っています。将来、医師の仕事がAIに完全に取って代わられることはないと思いますが、多くの面でサポートを受けられるのではないかと思います。その分、今よりも少ない人数で大きな病院を運営できるようになりますし、社会が求める医師の数自体も減少することが予想されます。私は病理医ですが、病理診断にもAIを導入することが可能なのではないかということが学会でも盛んに議論されています。社会や技術の変化に柔軟に対応し、研究分野や臨床医療の現場をリードできる医師を育成していきたいと考えています。

東京医科歯科大学

Q2.東京医科歯科大学医学部の教育カリキュラムなどの特徴に関してお聞かせください。

東京医科歯科大学は研究を重要視した教育カリキュラムを設けています。研究医を養成するコースやプログラムを用意して、1、2年生の早い時期から参加してもらえるように教育環境が整備されています。入学してくる学生も研究志向が強く、学生のほとんどが研究実践プログラムに参加して早い時期に研究に触れることができています。学生の研究へのモチベーションは他の大学よりも比較的高いとは思いますが、近年、専門医の資格が重視されるようになったことで、大学院に進学せず専門医の資格を取ることを選択する学生が増えており、研究医を目指す学生は少ないのが現状です。大学側としても、何か対策を講じなければならないと考えています。
また、AIやIOTの技術発達が進むに連れて、近年では大学の試験の様子も変わってきています。以前では、教科書や授業の内容をしっかり理解して試験に臨むことが一般的でしたが、今では本でも電子機器でもなんでも持ち込んで良いという試験も試行されているようです。医師国家試験も、大学のカリキュラムが分野別専門認証に対応した新しいカリキュラムに変更する中で、知識を問う問題が減少して臨床医療の現場での知識を問う問題が増加しています。医学教育の大きな流れが、知識の習得、詰め込みから、情報リテラシーや取捨選択、処理能力を重視する方に移ろいつつあることを日々実感しています。

東京医科歯科大学

Q3.先生ご自身のことについてもお聞かせください。

私は東京都の出身で、高校は東京教育大学附属、現在の筑波大学附属駒場高校に通っていました。当時、高校では受験向けの授業はあまり行われておらず、受験勉強は家に帰ってから行っていました。夏休みなどは予備校に通って勉強していました。模擬試験をよく受験した記憶があります。大学受験では、一期校として東京大学の理科I類、二期校として東京医科歯科大学医学部を受験しました。当時は東大に入って工学系の研究者になり、宇宙工学を専攻するか、医学部に入るかで悩みましたが、両親や高校の先生と相談し、幅広い学問を勉強できるのは医学部なのではないかと考え、東京医科歯科大学医学部に進学することに決めました。今になって振り返ってみれば、自分にとっては医科歯科に来て良かったのではないかと思っています。
大学に入ってからはバレーボール部に所属し、運動と勉強を両立させながら学生生活を送っていました。入学時から研究者志望で、臨床は自分には合ってないと実感し、病理の道へと進みました。私が所属した研究室は比較的自由な雰囲気の研究室で、何かを強制されるということはなく、皆自分のテーマについて黙々と研究をしていました。先生は研究に関しては自由にさせてくれましたが、後から思えばそれがとても良かったと思っています。病理学は臨床の現場で得た問題を研究室に持ち帰り、研究や実験を繰り返して臨床現場にフィードバックするのが主な流れです。臨床とのダイレクトなつながりがあるのは基礎医学では珍しくそこが病理学の面白いところだと思います。自分が直接患者さんの病気を治すわけではなく、感謝されることもありませんが、非常に大切でやりがいのある仕事です。人手不足で困っているところでもありますので、ぜひ病理学に興味を持ってもらえたらと考えています。

Q4.東京医科歯科大学医学部を目指す受験生の皆さんにメッセージがあればお願いします。

東京医科歯科大学に愛を持って大学生活を送れる人にぜひ入学してほしいと考えています。また、本学の特徴は何と言っても研究にあります。ぜひ、研究に興味のある人に受験していただけたらと思います。また、海外への留学制度に関しても相当力を入れて整備しています。臨床と研究のどちらも高いレベルで両立しようという志のある受験生の入学を楽しみにしています。

関連リンク 東京医科歯科大学ホームページ

きたがわまさのぶ
北川昌伸先生 略歴

学歴
1981年 卒業 東京医科歯科大学 医学部 医学科
1985年 修了 東京医科歯科大学 医学研究科 病理学 博士課程

経歴
1985年4月~1994年5月 東京医科歯科大学医学部 病理学第二講座助手
1994年6月 東京医科歯科大学医学部病理学第二講座講師
1995年4月 東京医科歯科大学医学部感染免疫病理学講座講師
1997年5月 東京医科歯科大学医学系研究科感染免疫病理学講座助教授
2000年3月 東京医科歯科大学医学系研究科感染免疫病理学講座助教授
2002年4月 東京医科歯科大学医学系研究科分子免疫病理学講座助教授
2003年4月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科包括病理学講座助教授
2005年9月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科包括病理学分野 教授
2017年4月 東京医科歯科大学 医学部長

所属学協会
・日本病理学会
・日本癌学会

委員歴
・日本病理学会 評議員・常任理事
・日本学生支援機構 優秀学生顕彰選考委員
・理化学研究所横浜研究所 研究倫理審査委員長
・医道審議会 分科会委員
・日本専門医機構 理事

資格、免許
・医師
・死体解剖資格
・病理専門医