藤田医科大学医学部長 岩田仲生先生
Q1.藤田医科大学医学部の特徴についてお聞かせください。
藤田医科大学医学部の伝統として、全ての教員が学生の教育に非常に熱心で情熱があることだと自負しています。学生一人ひとりに対して丁寧で親身な指導を心がけています。教員、スタッフ含めて手厚いサポートを学生に対して行なっていることは本学の大きな特徴です。学生同士の縦横の連携も強く、寮や下宿先などで先輩が後輩の面倒を見る文化が根付いています。学生と教員の距離も非常に近いと思います。指導教員制度は毎年改善を繰り返しており、現在は4,5人に1人の割合で教員が学生の面倒を見ています。教員と学生が食事をとりながらコミュニケーションをとることが長年の慣例となっており、和やかな雰囲気の中で教員が学生の相談に乗るなどしています。教員は担当の学生について、出席や試験の結果などをリアルタイムで確認しながら適切な指導を行なっています。教員と学生の距離が近くなるような仕組みがあちこちに整備されていることで、面倒見の良い校風が維持されていると感じています。
学生のほとんどは臨床医を目指して入学してきます。本学医学部の使命は良き臨床医の育成です。そのため、臨床実習には特に力を入れています。特徴的なのはコア診療科での参加型臨床習期間は病院スタッフの一員として365日の休み無しの実習を行っています。学生にとっては辛い面もありますが、一般的には研修医が行うレベルの医行為も概ね学生のうちに先取りで学ぶことを目指しています。良き臨床医になるのにフライングはないという観点で全学を挙げて取り組んでいることです。
入試に関しては、臨床医の育成に当たって、医師となって社会貢献をしていける素養を持った学生を積極的に採用したいと考えています。本学医学部は学業成績のみでは測れない医師としての素養のある学生に入学してほしいと考えています。そのような学生を多く採用するためにも、これからも多様な形態での選抜方式を行なっていきたいと考えています。
Q2.藤田医科大学医学部の教育に関する特色などお聞かせください。
分野別専門認証への対応に関しては、平成30年度からの本格的な導入を目指して数年がかりでカリキュラムの改善を行なってきています。カリキュラムの改善に伴ってアクティブラーニングの導入も推進しています。講義はiPadを使ったインタラクティブな授業形態としており、配付資料や学生個々人が書き込んだノートを含めてクラウド上のサーバに保管され、常時閲覧検索ができます。また講義もビデオ収録されており自宅からでも再度視聴して復習できるようになっています。学生が何を学んだかではなく、何ができるようになったかに重点に置いたアウトカム基盤型の教育が実践できるように改革を推進しています。
医師としての職業・医療倫理は、海外ではメディカル・プロフェッショナリズムと呼ばれており元々個人に備わっているものではなく、学習によって習得できるものであると捉えられています。1年生から6年生まで継続したプログラムを作って教育をしています。しかし、職業・医療倫理の本質は座学では習得できないものです。卒業後の教育も重要であり本学では卒前卒後教育を切れ目なく生涯教育を実践していくことを目指しています。
現行の国家試験は知識を相対的に評価しており、アウトカム基盤型の教育成果を評価する試験ではありません。一方で現行の国家試験で問われている知識は医師としては最低限のレベルであるという認識で取り組んでいます。学力不足の学生に対しては特に配慮して対策を取っています。私たちは入学した学生は全員医師になってほしいと考えています。学生一人ひとりの個性を尊重しながら、対応していきたいと考えています。
Q3.先生ご自身のことについてお聞かせください。
私は生まれも育ちも名古屋で地元の中高一貫の私立校に進学しました。私の実家は代々精神科病院を営んでいましたので、私が医師になることは家族にとって当たり前ことのようでした。医師となって困っている患者さんのために尽くせ、とよく言われていたのを覚えています。子供の頃はよく病院に連れて行かれ、病棟で遊んだり、精神病の患者さんと触れ合ったりしていました。しかし大学進学時にはそのまま医師になることには悩んでいました。最終的には医師以外で世のため人のためになれるのか、という父との問答の流れで、まずは医学部に進学してからじっくり考えようと浪人して医学部に進学しました。そういう意味では不十分なキャリア意識だったと反省しています。
医学部入学後は体育会のサッカー部に所属して、部活動やアルバイト等に明け暮れていました。当時は学生が授業にあまり出席せず、大体10人ほどしか講義室に学生はいませんでした。講義には余り出席しませんでしたが3年生の頃から免疫学教室、4年生からは生化学教室に出入りするようになり、そこで医学研究に触れるようになりました。
当時名古屋大学に赴任された生化学の教授が、当初精神科に入局しその後神経生化学の研究者になられた方で、元々精神医学研究に興味がありましたのでカテコラミンの神経生化学研究に携わるようになりました。また自分が医学部入学時に悩んだ経験から、不遜にも自分が精神病の研究をして精神病を全て治してしまえばいいんだ、と決意して研究の道へと進みました。精神病に関する研究は他の疾患と違い通常の医科学モデルのみでなく心理・社会的な側面を統合的に捉えていくことが必要で非常に難しいですが、だからこそ取り組み甲斐のある面白い学問です。脳や心の研究は今の科学ではうまく扱いきれないところもありますが、確実に進歩を続けています。私は精神疾患の遺伝子研究を行なっていますが、近年幾つかの関連する遺伝子が同定され、その機能や遺伝と環境の相互作用を検討することで解明の糸口が徐々に見えてきたところです。
Q4.藤田医科大学医学部を目指す受験生にメッセージをお願いいたします。
私たちは良い臨床医の育成を目指しています。「我ら弱き人々への無限の同情心以て、片時も自己に驕ることなく医を行わん」という病院理念に基づき、患者を第一に考え、常に患者に寄り添える医師になってほしいと考えています。また、医師になる上で自己犠牲の精神は非常に重要です。患者に良い医療を提供するためには卒業後も奢ることなく勉強を続けることが大切です。このような理念に共感していただける受験生にぜひ受験してほしいと考えています。
関連リンク 藤田医科大学ホームページ
学歴・職歴・役職
平成1(1989).3 名古屋大医学部 卒業
平成5(1993).3 名古屋大学医学部 大学院修了 博士(医学)
平成5(1993).4 北医療生協 北病院 医師
平成6(1994).4 名古屋大学医学部 精神科 医員
平成8(1996).4 米国国立衛生研究所(NIH) Visiting Fellow
平成10(1998).10 藤田保健衛生大学医学部 精神神経科学講座 講師
平成14(2002).11 藤田保健衛生大学医学部 精神神経科学講座 助教授
平成15(2003). 12 藤田保健衛生大学医学部 精神神経科学講座 教授
平成23(2011).4 藤田保健衛生大学医学部 副医学部長(兼任~2013.3)
平成23(2011).7 学校法人藤田学園 理事長席付補佐(兼任~2014.3)
平成23(2011).9 藤田保健衛生大学病院研究支援推進センター センター長(兼任)
平成24(2012).2 藤田保健衛生大学病院 副院長(兼任~2015.1)
平成26(2014).4 藤田保健衛生大学 統括学長補佐(兼任~2016.3)
平成27(2015).6 藤田保健衛生大学医学部 医学部長
学校法人藤田学園 理事・評議員
平成28(2016).4 藤田保健衛生大学 副学長(兼任)
専門・研究分野
分子精神医学、遺伝精神医学、薬理遺伝学