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大分大学医学部長 守山正胤先生

医学部進路の決め方

Q1.大分大学医学部の特徴についてお聞かせください。

大分大学医学部は、40年ほど前に新設医学部として設立された大分医科大学が前身となっています。当時の一県一医大構想の趣旨は、県民の命と健康を守る医師を地元で育成することでした。したがって、大分大学医学部の一番の使命は、大分県の地域医療を担う人材の養成であることは今も変わりありません。その上で、入学してくる110名の学生が持つ110個の個性を十分に把握して、それぞれの才能を伸ばすことのできる教育を行うことが大分大学医学部の大きな目標です。地域医療や臨床医療を担う医師のみならず、基礎医学の研究者の育成も行っており、本学の基礎医学研究者の多くは本学医学部の卒業生です。地域医療を担うという使命を忘れずに取り組みながらも型に縛られない自由な教育をこれからも行っていきたいと考えています。
専門医制度が重要視されるようになり、医師の質を保証し医療ミスを防ぐ仕組みが整備される中で、学生の都会志向・大病院志向が強まり、大分に残って研修を受ける卒業生が減少することが考えられます。卒前教育として倫理教育などをしっかり行うとともに、卒業後のキャリアパスをしっかりと示すことで、本学に卒業後も残ってくれる学生を増やす取組を行っています。この地域でもレベルの高い研修が受けられるようにするために、地方自治体や医師会などと協力体制を築き、卒前・卒後教育の充実を図っていきたいと考えています。
国際的に活躍できる医師の養成にも力を入れています。海外に留学したい学生は、国際交流協定提携先であるフィリピンの病院で海外研修を受けることが可能です。さらに、大分医科大学設立時に感染症の研究が盛んに行われていたことから、ドミニカ共和国において医療支援を行っていた歴史もあり、同国とは今も交流を行っています。

大分大学医学部

Q2.大分大学医学部の教育の特徴についてお聞かせください。

大分大学医学部には、医学科と看護学科とがあります。両学科は部活動などの課外活動での協力体制も整っており、看護学教育に医学科の教員が参加するなど連携もしっかり図っています。また、地域の医療現場を早い段階から学ぶ実習も取り入れています。さらに、大分大学には平成28年度に福祉健康科学部という新しい学部が設置されました。福祉系の学部が新設された強みを生かして、地域包括ケアなどを学ぶ実習授業において、医学部医学科・看護学科、福祉健康科学部の学生が一堂に会して、ケーススタディを取り入れたシミュレーション教育を実施する事になっています。新しい学部との横の連携を密にし、学生にこれからの社会で必要な教育を提供していきたいと考えています。
また、昨年、一般社団法人日本医学教育評価機構(JACME)が設立され、医学教育における国際基準のクリアが求められています。本学もJACMEによる評価を受ける予定としており、既に新しいカリキュラムを策定し昨年度入学生から実施しています。新カリキュラムに移行したことで、臨床実習の時間が増えました。今後も教育改革は不断の努力を必要としています。
一方、学業不振に陥る一部学生への対策も大きな課題です。このような学生の問題点の一つは大学生のライフスタイルに適応できていないことです。高校ではこまめに定期試験があり、学力の定着を丁寧に確認して、積み重ねることができましたが、医学部では一度の試験で求められる知識量が多く、試験範囲も桁違いです。この違いに早く気付き、うまく適応することが医学部生には求められます。また、学生の論理的に考える力が不足してきていることも懸念しています。私たちが学生だった頃は、分厚い教科書を四苦八苦しながら読み、内容を理解することで知識を得るとともに、論理的な思考能力を養っていました。近年、教育のプログラムが工夫されており、ノートのように丁寧にまとめられた教科書が市販されるようになったこと等の影響からか、学生が論理的な文章を読んで自分の頭の中で再構成する力が不足してきているように感じています。新しいカリキュラムに変更することに伴って、学生の論理的思考能力を鍛えることにも取り組んでいかなければならないと考えています。
大分大学医学部は医療倫理を非常に重要視しています。以前は教養教育課程において倫理学や哲学について学習する科目を設置していましたが、数年前から1年生から6年生まで一貫したプログラムを用意し、医療倫理の専門家による医療倫理教育を行うこととしました。また、このプログラムでは、卒前教育の一環として将来のキャリアプランを考える講義も行っています。医学が進歩するため、患者に良い医療を提供するためには一生勉強を続けなくてはなりません。将来医師として活躍するために必要不可欠な正しい倫理観や適切なキャリアプランを考える講義を通して、社会に貢献できる医療人の育成にこれからも寄与したいと考えています。

大分大学医学部

Q3.先生ご自身のことについてお聞かせください。

富山県の出身で、高校は富山高校に通いました。医学部を志望したきっかけはそれほどはっきりしたものがあったわけではなかったと思います。クラスの約半分が東大に進学していたので、なんとなく東大か医学部という雰囲気がクラスにあって、どちらかといえば人を相手にした仕事がしたいと思い、医学部への進学を決めました。
ところが、進学した秋田大学医学部で素晴らしい先生との出会いがあり、この先生のもとで勉強したいという思いから泌尿器科の道へと進みました。恩師は素晴らしい臨床医でありながら世界的な研究者でもあり、そんな恩師の姿を見ていつの間にか医師としての研究の重要性を強く意識するようになりました。それで臨床と研究を両立できる医師になろうと決意しました。その後、東京の東京厚生年金病院で泌尿器科医として働くことになりましたが、東京大学の医科学研究所(以下:医科研)の客員研究員として病理の研究も続けていました。研究は病院での診療の後、夜のみしかできませんでしたが、熱心に医科研の病理学研究部に通い、夜遅くまで研究生活を楽しみました。あまり毎日通ってくるので、研究室で指導して頂いていた森 茂郎教授(当時)から「そんなに研究が好きなら一緒に研究しないか」と誘っていただき、医科研の助手に採用され研究者としてのキャリアが始まりました。今思えば、子供の頃から魚や光の自由研究に熱中していましたので、研究者は自分に向いていたのかもしれないと感じています。現在は学部長という立場で職務に忙しく、研究は後進の研究者に任せきりになってしまっていますが、学生との交流はなるべく行うように心がけていますし、これからも大切にしていきたいと考えています。

大分大学医学部

Q4.大分大学医学部を目指す受験生にメッセージをお願いいたします。

高校生の時点で自分の目指す医師像がはっきりしていればそれは素晴らしいことですが、漠然とした志望動機でも構わないと思います。人命を預かる医師という職業を尊敬する心があること、自分がなすべき事に対して責任感をもってやり抜く強い気持ち、あるいはそれを成し遂げるための忍耐力があること、そして、できれば新しいことに興味をもつ好奇心があるとよいと思います。医学部入学後は受験生時代以上の勉強が必要です。その覚悟があり、自分は大丈夫だと思う人は是非受験してほしいと思います。

関連リンク 大分大学ホームページ

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守山正胤先生 略歴

職業
大分大学医学部分子病理学講座教授

役職
大分大学医学部長

経歴
昭和58年3月  秋田大学医学部卒業
昭和58年6月  秋田大学医学部泌尿器科入局
昭和63年3月  秋田大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)
昭和63年4月  東京厚生年金病院泌尿器科赴任(医員、医長)
平成2年7月   大阪大学微生物病研究所発癌遺伝子部門(ポスドク)
平成3年9月   東京大学医科学研究所病理学研究部助手
平成10年11月 鳥取大学医学部生命科学科分子生物学教室助教授
平成15年9月  大分医科大学免疫アレルギー統御講座教授(病理学第二)
平成15年10月 大分大学医学部免疫アレルギー統御講座教授(病理学第二)
平成20年7月  大分大学医学部分子病理学講座教授
平成25年10月 大分大学医学部長
現在に至る

学会活動
日本病理学会(評議員)
日本癌学会(評議員)
日本泌尿器科学会(会員)
日本分子生物学会(会員)
米国実験病理学会(American Society of Investigative Pathology) (会員)

賞罰
鳥取大学科学研究業績表彰(平成13年3月)