高知大学医学部長 本家孝一先生
Q1.高知大学医学部の特徴についてお聞かせください。
高知大学医学部は、昭和51年に高知医科大学として開学しました。平成10年には看護学科を増設し、医師及び看護師を養成する医育高等教育機関として発展してきました。平成15年に旧高知大学と統合して高知大学医学部となりました。現在まで、約3000名の医学部卒業生を輩出しており、卒業生は医療、医学研究、医学教育、行政などの幅広い分野で活躍しています。
分野別認証に対応した新しいカリキュラムへの改革が進んでいます。老健施設や市内のクリニックにおいて、低学年からの実習が行われます。さらに、高知大学医学部独自の取り組みとして、地域医療道場や家庭医道場というプログラムがあります。希望者は長期休みの期間または週末を使って臨床実習を受けることが可能になっています。実習では、どの段階においても学生が積極的に参加することを重視しています。同じような内容の実習でも、一回目と二回目では学生が得るものに違いがあると思います。大切なことは繰り返し教えながら、優れた臨床医の育成を目指しています。
AIや再生医療など、医療の進歩が著しい現代で活躍するためには、臨床医であっても、リサーチマインドを持った医師であることは非常に重要になります。高知大学医学部では、リサーチマインドのある医師の育成のために先端医療学コースを設けています。選択科目として学生が選択できるようになっており、このコースを選んだ学生は研究室に所属しながら、三年間にわたって医学研究について学習します。毎年20名ほどの学生がこのコースを選択しており、中には学会で発表して賞を受賞する学生もおります。研究のためのデータに関しては、開学以来設置されている医学情報センターに蓄積されています。このデータは患者さんの個人情報に関しては匿名化されており、学生も研究のために利用できるように整備されています。学生もデータを使って研究することが可能ですから、自分でプログラムを作って研究することが非常に良い勉強になります。中には非常に優秀な研究をする学生もおり、筆頭著者で英文一流雑誌に掲載された例もあります。
学生の多様性はなるべく維持しようと努めています。AO入試や学士編入を積極的に実施して様々なバックグラウンドを持つ学生を採用しようと取り組んでいます。以前は一般入試でも非常に特色ある入試を行なっていました。多様性ある自由な校風は高知大学医学部の良い伝統だと考えています。また、多様性に関しては、海外の大学との交流もあります。医学科はハワイ大学との交流がありますし、看護学科は台湾大学との交流が盛んに行われています。毎年3名ほどの学生が留学に行っており、女子学生の方が留学に熱心な傾向があります。
Q2.先生ご自身のことについてお聞かせください。
私は大阪府の出身です。高校時代は暗記科目が苦手で、社会科は政治経済のみで受験できる大学を探して受験しました。当時は一期校、二期校の時代でしたが、政治経済で受験できる医学部は大阪大学と北海道大学だけでした。当時の大阪は光化学スモッグがひどく、毎日警報が発令されて外にも出られないような状態でした。環境の良いところで勉強したいという思いから、北海道大学医学部に進学しました。北海道では、大阪から来た私は外国に来たような気分になりました。ラジオを聴いても大阪とは全く違う言葉で、違った趣の番組が流れていましたし、松山千春はまだ全国的に有名になる前でしたので、北海道のスターのような扱いで、当時の大阪と北海道は全く違った文化の土地でした。
元々は小児科の医師になることを目指していましたので、小児科の医局に入局しました。しかし、小児科は当時、大学院生を募集していませんでした。そこで、小児疾患の一つである先天代謝異常症を研究していた生化学の研究室に所属して研究を始めました。研究を始めて三年目の始めくらいに研究室の助教授が大阪大学の生化学の教授になり、助手をしていた先生が助教授になったので私が助手になることになり、そのまま研究の道に進むことになりました。その後、北海道大学で師事していた教授が定年退職したのちに大阪大学に移って研究を続け、14年前に高知大学に赴任しました。学生を教えていて大学によって学力に差を感じることはありませんが、昔の学生は自由度が高く、殻を大きく突き破っていたような気がします。
Q3.高知大学医学部を目指す受験生にメッセージをお願いいたします。
将来の世界がどうなっているのかは誰にも想像できません。したがって、様々なことに対応できる柔軟な思考力を持った医師を育成することを目指しています。学生には、自分で壁を作らず、やりたいと思うことに突き進むことができることを望みます。嫌なことをすることほど辛い人生はありません。やりたいことをしっかり考えて受験することを期待します。
関連リンク 高知大学ホームページ
学歴
学歴
昭和58年 3月 北海道大学医学部 卒業
昭和58年 4月 北海道大学大学院医学研究科博士課程 入学
昭和61年 3月 同 中退(助手任用のため)
昭和58年 5月 医師免許証取得
平成 6年 3月 博士(医学)学位取得
職歴
昭和61年 4月 北海道大学医学部附属癌研究施設生化学部門 助手
平成 4年 7月 北海道大学医学部附属癌研究施設生化学部門 講師
平成 7年 4月 大阪府立母子保健総合医療センター研究所 主任研究員
平成11年11月 大阪大学医学系研究科 生体制御医学専攻生化学・分子生物学講座 助教授
平成15年 7月 高知医科大学 遺伝子病態制御学教室 教授
平成15年10月 高知大学医学部医学科遺伝子病態制御学教室教授(大学統合による)
平成16年 4月 国立大学法人高知大学医学部医学科遺伝子病態制御学教室教授(国立大学法人化による)
平成18年 4月 同 医学部医学科生化学講座 教授(学内改組による)
平成18年 4月 同 副学長(研究担当) 併任(?平成22年3月)
平成18年 4月 同 評価本部長 併任(~平成24年3月)
平成19年10月 同 医学部附属システム糖鎖生物学教育研究センター長 併任
平成21年 9月 同 医学部附属先端医療学推進センター長 併任
平成22年 4月 同 教育研究部医療学系基礎医学部門生化学講座 教授(学内改組による)
平成24年 4月 同 医学部医学科長 併任(~平成26年3月)
平成24年 4月 同 副学長(総務担当) 併任(~平成25年3月)
平成24年 4月 同 評価改革機構長 併任(学内改組による)(~平成28年3月)
平成25年 4月 同 副理事 併任(~平成28年3月)
平成26年 4月 同 医学部副医学部長 併任(~平成28年3月)
平成28年 4月 同 医学部長 併任 現在に至る