横浜市立大学医学部長 益田宗孝先生
Q1.横浜市立大学医学部医学科の特徴や教育改革の様子を教えて頂けますでしょうか。
横浜市立大学福浦キャンパスは医学部のみのキャンパスであり、富士山や東京湾が見える環境で、和気藹々と勉強や部活に励むことができます。基礎系の研究活動も活発で、臨床は二つの大学附属病院で実習ができます。卒業後は神奈川県を中心に多くの関連中核病院群と連携しているため、研修先には事欠きません。
一方でグローバリズムを掲げているのも特徴と言えます。全学を挙げて学生時代からの留学を支援しており、医学部も海外での臨床実習や研究実習への参加を推奨しています。カリフォルニア大学サンディエゴ校、シンガポール国立大学、上海交通大学、ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)など12校と提携し、学生の派遣および受入れを行っています。現在も複数の欧米名門校と交渉中で今後さらに増えていくと思います。
横浜市立大学医学部はリサーチマインドに富み、グローバリズムを持ち合わせ、かつ、知識や技量のみならず患者さんを思いやることのできる医師を育成することを目標としています。リサーチ・クラークシップ(研究実習)やクリニカル・クラークシップ(臨床実習)の導入、シミュレーションセンターの充実、担任制度、在学中の海外留学の機会の創生など教育内容を充実させています。
現在、授業時間は1コマ60分で実施しています。狙いとしては、自主的に勉強する学生を育てようということがあります。また、医師は患者さんとの信頼関係が重要になっているため、モラルやコミュニケーションを学ぶ機会も重んじています。
横浜市立大学医学部は平成28年5月に医学教育分野別評価を受審しました。審査での指摘に対応、改善を図っていくために、これまで7つだった部門をより部門横断的な運営をするため5つに再編しました。また、新しい医学教育モデル・コア・カリキュラムに対応すべく、教職員で協力して工夫をしながら学生の指導を行い、改革を進めているところです。
Q2.横浜市立大学医学部は特別推薦入試で神奈川県内の生徒たちを採られていますが、入学された生徒さんの状況はどのようなものでしょうか。また、入試制度の変更などはありますでしょうか。
横浜市立大学医学部は一般枠と地域医療枠と指定診療科枠があります。どの枠で入学した学生も、同様のカリキュラムで区別なく教育しています。特別推薦入試で合格した方たちは地域医療枠になりますが、非常に優秀で、意欲をもって勉学に励んでいるようです。
今後は入試も改革していきます。現在推薦入試の拡充を検討しています。さらに、国際バカロレア入試を来年から始めることにしました。
横浜市立大学医学部は地域に根差している大学です。卒業生も神奈川県内に残って貢献している方が多いのが特徴だと思います。神奈川県は人口が多いので、神奈川県内で医師として活躍できる場所はたくさんあります。
専門医制度が新しくなり、これまでのカリキュラム制度と異なり、これからはプログラム制度になります。何処かのプログラムに属さなければ専門医になれないというシステムに変わりましたので、今までのようにどこにいてもよいという状態から何処かに属さなければいけないということになります。横浜市立大学医学部も変更に対応して卒業生へのサポートも充実させていこうと考えています。
Q3.ご自身が、医師を目指されたきっかけや受験勉強でのエピソード、人生のターニングポイントなどについて、お聞かせ下さい。
私の生まれは福岡で、実家は山口の下関にありました。中学と高校は周囲の勧めで広島にある進学校で勉強しました。父は下関で開業医として活躍していました。夜、急患を診るために出かけていく父の後姿を見て尊い仕事だと感じ、医師を目指しました。もともと福岡に地縁があり、身内に九州大学医学部出身者が多かったこともあり、私も九州大学医学部に進学しました。
はじめは整形外科に進もうと考えていましたが、学生時代に整形外科を回った際に、整形外科医では、道で急に倒れている人を助けることができないことに気がつきました。外科の方が緊急性の高い症状の人を助けることができるのではないかと考え、九州大学の部活の部長として、とても尊敬していた先生が心臓外科の教授だったこともあり、心臓外科を志す事にしました。当時は癌の告知をしない時代で、癌の患者さんに嘘をつかなければいけない時代でしたが、私は嘘をつくことが苦手で、嘘をつかなくてもいい外科が心臓外科と脳外科であったのも心臓外科を選んだ大きな理由です。心臓外科は手術で患者さんの命を奪ってしまう可能性があります。確かにプレッシャーは大きいのですが、手術が成功すれば、患者さんにとても元気になってもらえるので、喜びは本当に大きいのです。また、私は子供の心臓の手術も担当していますので、子供が元気になって成長してくれることにも大きなやりがいを感じています。
Q4.横浜市立大学医学部を目指す受験生に求める心構え、メッセージをお願い致します。
横浜市立大学医学部は医師や医学研究者というプロフェッショナルを育てることを使命としております。大学とは自主的に学ぶ学生のためにある教育機関です。横浜市立大学医学部の難関を突破した学生は、必ず一人前の医師になれますし、また、なってもらいます。
成績が良いから医学部を目指されるというだけでは、モチベーションが続かないのではないかと懸念しています。学生の間はアマチュアですが、国家試験を合格して初期研修医になればプロです。責任の大きさも違います。医療は不確定の契約ですので、必ずしも治療が成功するとは限りません。そこで、患者さんとの信頼関係が重要になっています。患者さんやその御家族、そして、医療従事者とのコミュニケーションを大切にしてほしいです。プロフェッショナルになるという覚悟を持って臨んでいただきたいです。
医学生は英語が話せるほうが良いと考えています。横浜市立大学はグローバリズムを掲げていますので、前述の如く、大学全体として学生の時代から留学を推奨しています。
今後の医療がどうなるかわかりませんが、基本的には人に対してどう向き合うかという気持ちを大切にしていただければ、と考えています。
最後に、個人的なお願いです。心臓外科は大変ですが、なくてはならない診療科です。やりがいの大きさは言葉に表せないほどです。是非、目指す方が増えてくれたらと思っています。
関連リンク 横浜市立大学ホームページ
学歴
昭和49年 九州大学医学部医学科入学
昭和55年 九州大学医学部医学科卒業
免許等
昭和55年 第69回医師国家試験合格
昭和55年 医師免許証
昭和63年 日本胸部外科学会 正会員
平成 4年 日本胸部外科学会 認定医
平成 5年 日本外科学会 認定医
平成 6年 日本胸部外科学会 指導医
平成 6年 循環器専門医
平成16年 心臓血管外科専門医
平成16年 外科専門医
平成16年 日本外科学会指導医
学位
昭和62年 医学博士(九州大学)
職歴
昭和55年 九州大学医学部附属病院医員(研修医)(心臓外科)採用
昭和57年 福岡市立こども病院採用
昭和57年 九州大学医学部附属病院医員(研修医)(心臓外科)採用
昭和57年 九州厚生年金病院採用
昭和58年 九州大学医学部附属病院医員(心臓外科)採用
昭和61年 九州大学医学部附属病院助手採用
平成 1年 ベルギー王国ルーヴァンカトリック大学へ留学
平成 3年 九州大学医学部附属病院助手(心臓外科)復職
平成 4年 九州大学医学部附属心臓血管研究施設助手に配置換
平成 5年 九州大学医学部附属病院助手(医学部講師併任)採用
平成 6年 九州大学医学部附属病院講師に昇任(心臓外科)
平成 8年 福岡市立こども病院心臓血管外科医長に採用
平成10年 九州大学医学部附属病院講師(心臓外科)採用
平成17年 九州大学大学院医学研究院助教授(循環器外科)採用
平成18年 横浜市立大学大学院医学研究科外科治療学教授採用
平成28年 横浜市立大学附属市民総合医療センター副院長(兼任)
平成30年 横浜市立大学医学部長就任
横浜市立大学附属市民総合医療センター外科総長(兼任)
所属学会等
日本胸部外科学会(評議員)、日本外科学会(代議員)、日本小児循環器学会(評議員)、日本心臓血管外科学会(評議員)、日本人工臓器学会(評議員)、日本冠動脈外科学会(評議員)、日本循環器学会(評議員) 日本血管外科学会(評議員)、日本冠疾患学会(評議員)、日本外科系連合学会(評議員)、日本呼吸器外科学会、日本消化器外科学会、日本大腸肛門外科学会、日本臨床外科学会
Society of Thoracic Surgeons, European Association for Cardio-Thoracic Surgery、
Society of Asian Cardiovascular and Thoracic Surgery
賞罰
なし