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旭川医科大学学長 吉田晃敏先生

医学部進路の決め方

Q1.大学の特徴や大学の改革、特に分野別専門認証との兼ね合いなどの状況を教えてください。

旭川医科大学は1973年(昭和48年)に道北道東の医療格差解消を目的に設立されました。その後、社会状況が変わり医学部の卒業生は医師として様々なところに行く可能性があり、海外で研究するケースもでています。従って、様々なサポート体制を充実させるように大学側として工夫と努力をしています。

教育の理念としては、以下を標榜しています。
豊かな人間性と幅広い学問的視野を有し、生命の尊厳と高い倫理観を持ち、高度な知識・技術を身につけた医療人及び研究者を育成する。また、地域医療に根ざした医療・福祉の向上に貢献する医療者を育てる。さらに、教育、研究、医療活動を通じて国際社会の発展に寄与する医師及び看護職者の養成に努める。

さらに教育の目標として以下を掲げています。
 幅広い教養とモラルを養うことにより、豊かな人間性を形成する。
 生命の尊厳と医の倫理をわきまえる能力を養い、病める人を思い遣る心を育てる。
 全人的な医療人能力や高度な専門知識を得るとともに、生涯に亘る学習・研究能力を身につける。
 幅広いコミュニケーション能力を持ち、安全管理・チーム医療を実践する資質を身につける。
 地域・僻地住民の医療や福祉を理解し、それらに十分貢献しうる意欲と能力を獲得する。
 積極的な国際交流や国際貢献のための幅広い視野と能力を習得する。

旭川医科大学

特に現代社会においては、総合内科医だけを育てるということだけでは、もう全く太刀打ちできないという考えが強くあります。それで例えば先ほど申し上げたサポート体制ですが、各学年に担当教員がいて、それとは別に10人程のグループ担任制度をとっています。これは1年生から3年生を対象としているのですが、勉強や私生活の相談まで実施しています。
それから先ほど述べた通り、必ずしも北海道の医療を学ばせるというのではなくて、これは国立大学初めてなのですが、2018年からAO入試「国際医療人特別選抜」を始めました。初年度は2名の合格者となりました。
医学の英語というのは甘いものではなく、しっかり人の話を聞くことが出来て自分の意見を主張し、かつ医学を英語で述べることが出来るというものです。是非、意欲のある学生にチャレンジしてもらいたいと思っています。卒業後は彼らが旭川もしくは北海道に残って、「医療の国際化」のため活躍してほしいと思っています。
学生のサポートとして、ネットの整備や学生サロンなどの学習環境を整備し、臨床講義棟も全面リニューアル、図書館もアクティブラーニングスペースを設けるなど1.5倍の大きさにしました。実験実習機器センターや、動物実験施設も1.7倍に拡大しています。
入試に関して言えば、アドミッションポリシーで具体的に医師になってほしい人物像を示しています。詳細は本学のHPでも確認できます。以下のような内容が書かれていますので、具体的なイメージを持って受験してほしいと思います。

【入学前に身につけて欲しい能力等】
1. 将来医師として、他者に配慮し、自らの行動を律して社会で活動する強い志(「態度」「意欲・関心」)
2.学んだ知識や技能を論理的に応用して未知の事象を判断し、問題を見つけ解決する能力(「思考・判断」)
3.新たな知識や技能を学び続け、身に付ける能力(「知識・技能」)

旭川医科大学

Q2.吉田先生ご自身のことをお聞きしたいと思います。

札幌で生まれ、道内各地で育ちました。高校は函館ラ・サール高等学校です。進路はいろんな道も考えましたが、医師は素晴らしい仕事だと思い目指しました。具体的な進路は高校の時に決めました。
旭川医科大学時代の思い出としては、何もなかった所に一つひとつ建物が出来てきて、その建物に入りスピード感をもってカリキュラムをこなし卒業したことです。それと同じことを学長としてやっています。現在は建物も開学当初と比べればほとんどリニューアルされました。私が使っていた頃と同じ物は体育館くらいだと思います。私を含めて開学メンバーはパイオニアだと思います。時代のニーズに合わせて常に新しいことに取り組んでいるのが特徴だと思います。
眼科を選んだのは、早くから旭川医科大学で眼科学教室に触れる機会があり、その後入局し、眼科医としての道を歩んでいます。
ハーバード大学には2回留学しています。1度目は1980年~1983年に3年間、ハーバード大学医学部眼科、Schepens Eye Research Instituteに留学しました。2度目は助教授になった後に1989年に留学しています。
2回目に行ったのは、私が開発に携わった網膜血流計のパテントが取れそうだということでその研究協力のために行きました。そして、ハーバード大学スケペンス眼研究所からキャノン株式会社にパテントが委譲されました。これは当時の橋渡し研究であり、研究所で技術やパテントが開発され企業が買って、そして企業の研究室と大学が提携したというものです。米国では物理のチームや医学のチームなどたくさんいましたので一緒にやりました。
その後、ソニーやソフトバンクとも一緒に仕事をしています。これはすべて遠隔医療に繋がっています。テレメディスンの「テレ」を「遠い」と訳していますが、テレメディスンは「情報伝達」医療だと考えています。そのように考えれば、隣の病院も地球の裏側にある病院も遠隔です。1996年、G7のプロジェクトで当時の郵政省と文部省と旭川医科大学がハーバード大学との間で世界初の遠隔医療に取り組み、マサチューセッツ州知事から知事賞を頂きました。総務省にも研究費を支援してもらって、様々な医療と情報の研究をしてきました。それからソフトバンクの孫氏と専用のシステムを使わずに携帯電話で遠隔医療を行ってきました。その結果、2011年に、孫氏と私が連名で産学官連携文部科学大臣賞を頂きました。
ニューヨークプラザホテルで「クラウド医療」の記者会見をしています。内容はクラウドでの遠隔医療でまさにスマートフォン等を使って、クラウドを通してやるというものでこれは世界初です。つまりクラウドからユーザーにおりてくる信号の安全性が保てないということで日本国内でも認められていませんでした。そこで本学が安全性を証明し、現在全国で使えるようになりました。そしてアジア最大級のIHHグループ、今世界に50の病院があり、2年以内に中国に100の病院を創ろうとしているグループと旭川医科大学がコミュニケーションをとることによってアジアにおけるビッグデータ、それからそのデータをAIによってどう解析するのかということを、まさに今始めております。

私は遠隔医療用のビデオスコープも開発しました。24年前にスタートした時にはハーバード大学まで行き、その2年後です。これは、郵政省と文部省の協力を得て「G7のプロジェクト」で、日米初の遠隔医療をハーバード大学と一緒にやりました。
マサチューセッツ州から、プロクラメーション(宣言)を頂きました。これはアメリカ合衆国が独立した時と同じフォーマットでした。これに何が書いているかと言うと、まずは世界初だということ、そしてテレメディスンとテレサイエンス、世界的な研究のリーダーシップをとったということでした。それから我々は文部省にいろいろお願いしてこの遠隔医療センターを設立したわけです。けれどもすでにハーバード大学では、スター氏という方が多額の寄付をしてスター国際遠隔医療センターを設立していました。米国の国力の強さを感じました。

これまでの私の活動の詳細はHPでも紹介していますから、詳細はこちらで確認して頂ければと思います。
吉田晃敏 未来の展望鏡
http://pr-yoshida.com/

今は、外国人の方への医療教育を目的とした「国際医療・支援センター」の建設を計画しています。旭川市を国際的な医療都市にしようと、サハリン州との医療協力体制構築の取り組みを進めています。今後、ただ病院を作る手助けをするということだけではなくて、ロシアや中東などの外国人医療従事者への教育を通じて医療技術の世界への普及を旭川医科大学が推進していくことを目指しています。

関連リンク 旭川医科大学ホームページ

よしだあきとし
吉田晃敏先生 略歴

旭川医科大学 学長 CEO (在籍 11 年)

学歴、及び、職歴
・旭川医大卒、眼科入局(昭和 54 年)
・ハーバード大学 眼科 留学(昭和 55~58 年)
・旭川医大 眼科学講座 助教授(昭和 63 年)
・ハーバード大学 眼科 留学(平成元年)
・旭川医大 眼科学講座 教授(平成 4 年)
・第 7 代 旭川医科大学 学長 就任(平成19 年)(現在、11 年目)

主な受賞歴
1. マサチューセッツ州知事賞(G7プロジェクト[郵政省・文部省]、旭川医大とハーバード大学間で「世界初の遠隔医療実施」に対して、1996 年)
2. 総務大臣賞(2009 年)
3. 文部科学大臣賞(ソフトバンク孫正義氏と連名受賞、「モバイル遠隔医療」の実施に対して、2011 年)

主な役職
ハーバード大学医学部スケペンス眼研究所Board Member、日本眼循環学会 代表理事、日本遠隔医療学会 理事、海外における日本医療拠点の構築に向けた研究会(経済産業省) 委員

その他の活動実績
1. 遠隔医療(国内50、国外9 医療機関)での23年にわたる実績と、医療費削減による国家予算へ の貢献
2. ニューヨーク プラザホテルでの「クラウド遠隔医療」の記者会見(2016 年12 月3 日)。
日本人のプラザホテルでの記者会見は、SONYの盛田会長、ソフトバンクの孫社長、に次いで、3 人目。記者会見の様子は、「NHKワールド」で世界に向けて1 日に9 回放映。
3. 2017年1月、UAE大学学長に招待(2018年3月、国際遠隔医療を中東で展開するため、ドバイを再度訪問し、MOUを交渉中)。
4. 日露共同経済活動における官民調査団の一員(医療分野代表)として、サハリン州(2017年5月)および北方四島(2017年6月)を視察
5. アジア最大医療グループIHHの CEO Dr Tan See Leng 氏と、2018年1月18日に会談。4月3日に、国際遠隔医療とアジアの医師・看護師等、医療従事者を旭川で研修させるMOUを締結。
6. オリンピック・パラリンピック支援のため、本学の専任理事を任命。