東京医科大学学長 林由起子先生
Q1.東京医科大学の特色、特に良い点について教えてください。
1. 100年を超える歴史
東京医科大学は、大正5年(1916)9月に東京医学講習所として設立され、大正7年(1918)に「学祖」高橋琢也先生が全私財を投じ、各界の有志から多大なる支援を受け東京医学専門学校が設立、昭和21年(1946)に東京医科大学へ昇格しました。本学は、建学の精神である「自主自学」と校是である「正義・友愛・奉仕」の精神のもと、これまで日本のみならず世界で活躍する医師を多く輩出し、平成28年(2016)に創立100周年を迎え、現在に至っています。
2. 東京の中心にあるキャンパス
新宿という東京の中心にあるキャンパスで6年間を通して学ぶことができ、令和元年(2019)7月に西新宿駅上に開院した新大学病院においては、臨床実習の場として最先端医療に触れることができる環境が整備されています。さらには、茨城、八王子にも臨床実習施設(附属病院)を持ち、地域の特性を生かした医療を学ぶことができます。
3. きめ細やかな教育
熱意ある教員が多く、また、職員は学生一人ひとりを細やかに見守っています。学生が将来医師になったときに患者様の病気だけではなく、全人的に背景にあるものまで考えていくことができるように、単に知識や技術だけではなく高い志を持てるように指導しています。
4. 活発な課外活動
本学は伝統的に課外活動が盛んな校風で、約9割の学生が体育会系の部活動に所属し、活発に活動しています。学生アンケートの結果からも、部活動によって横だけでなく縦のつながりが強く、先輩が後輩を指導するといった非常に面倒見のよい関係性が築けているとの回答も出ております。このように一人ひとりがコミュニケーションをしっかりとりながら充実した学生生活を送っていると思います。
5. 世界大学ランキングでランクインした日本の大学103校中16位
教育のレベルに関しては、イギリス教育専門雑誌Times higher education 実施世界大学ランキング2019(2018.9発表) 日本からランクインした1000位以内の103校中教育力(Teaching)、論文引用(Citations) ともに16位という結果となっています。学生は都心で充実したキャンパスライフを送れるとともに、高いレベルの教育を受けることができます。
Q2.東京医科大学が育成したい医師像やそのためのカリキュラムや制度、特徴について教えてください。
本学は、「患者とともに歩む医療人を育てる」というミッションを掲げていますので、これを実現するために、「トップクラスの臨床力」を修得出来るように、段階を踏んだカリキュラム・教育プログラムを用意しています。
その特徴を5つ挙げますと、
1. 知識を理論に基づいて体系化する
医学部では、多くの知識を学ばなければなりません。しかし、知識を覚えるだけでは、使える智慧にはなりません。私たちは、基礎医学という理論を基に、臨床医学の膨大な知識について体系づけることを目指しています。 基礎医学と臨床医学を並行して学ぶことによって、有機的なつながりが持てるように工夫しています。
2. 診察技能の修得に多くの時間を充てる
医師はベッドサイドで、診察する技能が重要です。そこで、この修得に多くの時間を充てるように工夫しています。基礎医学の知識を基に、診察技能を学ぶように工夫されている点も大きな特徴です。これにより、3年次に正常診察の学習は一通り終え、4年次から6年次の臨床時実習で使いこなせる技能として定着するようにしています。
3. 主体的に考えることを重視した態度教育
現代は、態度面でのしつけが不十分な時代と言われています。そこで、私たちは、「他者や社会を理解するために、いかに考え、いかに行動するか」という思考の技法を修得するためのプログラムを計画しています。自分の考えを認識し、他者の考え・気持ちを理解することによって、人間理解につながると考えるからです。一方、考える実践の場として、多職種との実習、患者さんの考えを聞く講義、プロフェッショナルとしての心構えを考える演習、医療倫理の演習、社会貢献活動など、多彩なプログラムが用意されています。また、医学生としての行動指針、規範(Fitness to practice)を、学生と教員が共同して作りました。全国でも珍しい試みと思います。
4. 幅広く活躍できる医療人の育成
医学英語教育の充実と国際交流プログラムの強化を行っています。海外のおける姉妹校、学生交流締結校、協力校 計15校と充実しており、毎年30人程度の交流があります。
5. リサーチマインドの育成
医療者として欠かせないものは、リサーチマインドです。本学では学生時代から医学研究に積極的に参加できるよう、リサーチマインドを育成する環境を整えています。
Q3.医師を目指されたきっかけ、受験勉強でのエピソード、人生のターニングポイント
私自身、小さい頃から読書が好きでした。書物から知識を得て、考えるヒントをもらっていくうちに自然と理系分野に興味を持つようになりました。身近に医師がいるような環境ではありませんでしたが、中高一貫の進学校に通っていたこともあって、医師を目標とするようになり、縁があって東京医科大学医学部医学科で6年間学びました。そして、東京医科大学卒業後は、順天堂大学で5年、臨床経験を積んだ後、国立精神・神経医療研究センターで22年、研究に打ち込みながら神経研究所疾病研究第一部の第一室長を14年務めました。
その後、母校の東京医科大学から声がかかり、平成25年(2013)より教授として着任しました。以来、様々な役職を頂きながら学生の指導と研究の日々を過ごしてきました。研究は自分の性分に合っているのか、「発見する」という研究の醍醐味は、研究の大変さよりもずっと大きかったと感じています。
この度、平成30年(2018)10月から学長に就任し、東京医科大学の新生に向けて、日々、周りに助けられながら毎日を過ごしています。
Q4.東京医科大学医学部医学科を目指す受験生に向けての心構え、メッセージをお願い致します。
医師は、生涯自己研鑽を続けていかなければならない職業です。学問として分子(ミクロ)の世界から人間愛、地球愛までと幅広い領域にわたる仕事です。その分、生涯かけても終わりのない、とても素晴らしい職業だと思います。
東京医科大学の建学の精神は「自主自学」です。 自分で考え、行動できる医療人となって、患者様に寄り添い、最善・最良の医療を提供できる医師になっていただきたいと思います。
また、医師に向いている人として、時代の変化に適応できる柔軟な思考力のある人、好奇心、向上心が旺盛な人かと思いますので、本学はそのような方にぜひ入学いただければと思います。
関連リンク 東京医科大学ホームページ
学歴・職歴
1986年 3月 東京医科大学 卒業
1995年 2月 医学博士 順天堂大学 乙 第1206号
1986年 6月 順天堂大学 脳神経内科学講座 研修医
1991年 3月 同 上 助手
1991年 6月 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部 流動研究員
1999年11月 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部 第一室長
2013年 8月 東京医科大学 神経生理学講座 主任教授
2014年10月 東京医科大学 病態生理学分野 主任教授(組織変更・現在に至る)
2014年 7月 東京医科大学 校医(~2015年8月)
2015年 9月 東京医科大学 副図書館長
2016年 2月 東京医科大学病院 遺伝子診療センター 副センター長
2018年 4月 東京医科大学 医師・学生・研究者支援センター 副センター長
2018年10月 東京医科大学 学長
学会認定医・指導医等
日本生理学会 認定生理学エデュケーター、日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医、日本神経学会 認定医・指導医、日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医・指導医
学会役員等
日本生理学会 理事、日本筋学会 理事、日本神経学会 代議員、アジア・オセアニア筋学会 理事、日本学術会議 連携会員