佐賀大学医学部長 末岡榮三朗先生
Q1.佐賀大学 医学部の特色を教えて下さい。
佐賀大学医学部の前身は昭和51年10月に開学した佐賀医科大学医学部になります。昭和53年4月に第1期生を受け入れ、その後平成15年10月に旧佐賀大学と統合して、平成16年4月より国立大学法人佐賀大学医学部として再スタートしました。平成30年に開講40周年の節目を迎えています。
佐賀大学医学部は、開学当時から臨床中心の気風があると思います。私自身も佐賀医科大学の1期生です。とにかく1期生として自分たちで先生方とともに大学を作っていくという経験は大変に貴重なものでした。中でも早期に臨床の現場を体験させてくれる教育体制は大変役に立ちました。その実戦型の医師を輩出するという伝統は今も続いていると思います。受け身的な講義中心型の教育ではなく、能動的な実戦型の新しい医学教育を行うという姿勢は開学以来続いています。
医学部附属病院は平成23年度より再整備が行われており、最新の設備が導入されています。佐賀大学医学部の学生の実習も最先端の設備に触れながら行われています。
佐賀大学医学部も開学から40年を超えて、卒業生が佐賀県内をはじめ多くの地域で活躍しています。佐賀県を中心とした地域医療により一層、貢献できる環境が整ってきていると思います。
Q2.佐賀大学 医学部が育成したい医師像、そのための教育カリキュラムの特徴について教えて下さい。
医の実践において,強い生命倫理観に基づくとともに広い社会的視野の下に包括的に問題をとらえ,その解決を科学的・創造的に行うような医師を育成することを目標にしています。
プロフェッショナリズム、医学的知識、安全で最適な医療の実践、コミュニケーションと協働、国際的な視野に基づく地域医療への貢献、科学的な探究心の6つの目標を軸にして学生の教育を行っています。令和元年12月に医学教育分野別評価も受審します。
これまで行ってきた医学教育の在り方を見直し、国際標準による評価を行い、今後の医学教育の在り方を再確認する重要な取り組みであり、医学科各講座が一丸となって取り組んでいます。根底にあるのは、「よき医療人の育成」を佐賀からという思いです。
また、ICTやAIを積極的に導入し、産学連携の共同企画も推進させていく方向で動いています。
Q3.ご自身が、医師を目指されたきっかけや受験勉強でのエピソード、人生のターニングポイントなどについて、お聞かせ下さい。
私自身は山口県出身です。家は農家で医療関係者の家系ではありません。私が小学6年生のころから病気がちだった母を、高校の2年生の時に亡くしたことなどがきっかけで医学部を目標にすることにしました。それと姉と兄が医学部へ進学していたことも医学部を考えるきっかけになったと思います。大学1年生の時に父を亡くしたこともあって、医療へ貢献しようという決意が強かったと思います。
大学受験の時は家庭的な状況もあって、何が何でも現役合格をしなければいけないという感じでした。もし、医学部へ学力的に届かなければ、他の理系学部へ進学していたかもしれません。主に勉強は教科書に書き込みや内容を足すという形で、徹底的に読み込みをする勉強方法をとっていました。受験を迎える頃には教科書は相当分厚くなっていたことを覚えています。勉強の結果、当時第1期生を募集していた佐賀医科大学医学部へご縁あって入学することになりました。
入学してからは先輩がいませんから、先生も学生もとにかく手探りで一生懸命に活動していたと思います。部活も私自身、空手部、剣道部に参加、一時期は野球部にも所属するなどみんなで立ち上げていくという感じでした。医師国家試験を受験するときもみんなで協力して手探りで臨んでクリアしたことを覚えています。
当初は外科志望だったのですが、6年生の時に出会った血液内科の斎藤英彦教授の影響で大学院へ進学、その後に臨床の現場で働きました。臨床の現場で働くようになって4年目か5年目の時に、半年間で3人の方が急性白血病で亡くなられたのをきっかけに、何とかしなくてはという思いがあって、再び研究へ戻ることにしました。国立がんセンター研究所、埼玉県立がんセンター研究所と7年研究生活を過ごし、佐賀へ戻ってからは大学の方でその経験を生かして臨床を続けています。
Q4.最後に、佐賀大学医学部を目指す受験生に求める心構え、メッセージをお願い致します。
佐賀大学医学部では、入学した学生には基礎研究の重要性や楽しさも分かってもらい、基礎医学も理解できる深みを持った医療人として育つための工夫もしていきたいと考えています。臨床の現場では医師臨床研修制度も大きく変化し、新専門医制度は令和元年に2年目を迎えました。さらに医師の働き方改革も始まり、超高齢社会にも耐えうる医療提供体制を構築するため、「地域医療構想」が制度化されました。このような医療現場の状況の変化に対して、国全体の動きと佐賀の地域の実状を踏まえて、佐賀大学医学部に入学した皆さんと一緒に活動していけたらと思っています。
今後は、佐賀大学医学部を目指してみたいと思っていただけるように、高校生の方々へも積極的にアピールしていきたいと考えています。佐賀大学医学部のことを知って積極的に参加したいと思う学生の方を、一人でも多く増やしていけたらと思っています。
関連リンク 佐賀大学ホームページ
1984年3月 佐賀医科大学医学部卒業
1992年10月 国立がんセンター研究所がん予防研究部研究員
1993年10月 埼玉県立がんセンター研究所研究員(主任)
2003年8月 佐賀医科大学医学部内科学助教授
2010年10月 佐賀大学医学部附属病院検査部長
2011年4月 佐賀大学医学部附属病院輸血部長(兼任)
2013年8月 佐賀大学医学部臨床検査医学講座教授
2015年8月~2018年3月
佐賀大学医学部臨床研究センター・臨床研究部門長
2016年4月~2019年9月
佐賀大学医学部附属病院 病院長特別補佐
佐賀大学医学部附属病院医療情報部長
佐賀大学医学部附属病院地域連携室長
2016年4月~ 佐賀大学医学部附属病院メディカル・バイオバンク長
2019年10月~ 佐賀大学医学部長
現在に至る
所属学会等
日本輸血・細胞治療学会(評議員)、日本臨床検査自動化学会(評議員)、日本臨床検査医学会(評議員)、日本臨床化学会(評議員、九州支部長)、日本がん分子標的学会(評議員)、日本HTLV-1学会(評議員)、日本癌学会、日本内科学会、日本血液学会、日本臨床血液学会、日本分子生物学会、日本造血細胞移植学会、日本がん疫学・分子疫学研究会
アメリカ癌学会、ヨーロッパ血液学会
日本臨床検査医学会臨床検査専門医、日本内科学会指導医、日本血液学会専門医(指導医)、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、日本輸血細胞治療学会認定医、日本輸血細胞治療学会細胞治療認定管理士